2023年教師学事例研究会のご報告

(教育とコミュニケーション力(りょく))

今こそ深めよう
生徒と教師の心の絆

昨年に引き続きオンライン形式で、8月5日(土)に実施しました。
日本各地から52名の方のご参加がありました。
「教師学」を初めて知ったという方や、この事例研究会に初めて参加したという方が今までより多く、オンライン形式だと参加の敷居も低く感じられるのかもしれません。
4名の発表者からは、幼児から高校生の年齢にわたる生の現場がありありと浮かぶ実践報告がありました。
参加者は各発表後にグループに分かれてディスカッションを行いました。限られた時間ではありましたが、発表内容に対する質問や感想などが出され、参加者全員で共有し、有意義な時間を持つことができました。

< 実践者の事例発表 >

I.中川 みゆきさん(元東京都私立保育園保育士)
●わたしメッセージで対応していたら子どもへの尊重と信頼の思いはちゃんと伝わっていくことを確信した事例
●ゴードンメソッドでの言葉かけを見ていた周辺の方へも温かさの輪が広がった事例
*保育は子どもと大人の協働作業なのだから、たとえ生後43日の赤ちゃんでも願いは届くと信頼して声掛けをしていたら行動に変容が、という温かい実践に気持ちがほっこりしました。

II.山口 祥子さん(千葉県公立小学校教頭)
●コロナ下で増えてきた不登校児童の支援に環境改善で対応した事例
●児童の心の声を聞く大切さに気付いた能動的な聞き方で対応した事例
*子どもが安心・安全を感じる環境と、心の声を聞いてくれる人がいることが大切だと感じた、という発表者の言葉に、皆さんの頷きが見られました。

III.宇野 友貴さん(東京都公立中学校教諭)
●対応が難しい生徒と年上の同僚教諭の間で、それぞれの気持ちに寄り添って話し合いができるように支援する介入的援助で対応した事例
*対立する生徒と年上の同僚教諭の間に立ち、フラットな立場でそれぞれの気持ちを聞いていくことの大切さを気づかされた事例でした。

IV.茨城 久一郎さん(静岡県私立中高非常勤講師・元校長)
●日本で第1回目の教師学講座を受講されて以後、実践を重ねていらした36年の教師生活の中で、成功例や失敗例を振り返られた話
*教師としての自信がない時に出会った「教師学」。これしか自分にはないと思いつつも、時には教師学の手法を忘れていたことを痛感する体験も。結局「教師学」を実践していくことが生徒も保護者も、そして自分も大切にするということだという思いを率直に語られ、胸が熱くなりました。

< 参加者の声(アンケートより一部抜粋) >

<教師学事例研究会へのご参加は?>
参加者の声
<今回の「教師学事例研究会」はいかがでしたか?>
参加者の声

感動的な発表で、ゴードンメソッド、教師学がもっと多くの人に広がってほしいと願っている。このイベントも、教師学を知らない方に多く参加してほしい。グループディスカッションでも教員の方の声を聴くことができて、教育現場の方の子どもを想う心に胸が熱くなりました。

はじめて参加させていただきました。沢山の方が学んでいらっしゃることに感銘いたしました。また、能動的な聞き方は、相手が大人であっても有効なものだと感じました。

ゴードンメソッドを使っていく事に関して、勇気をもらったように思います。こんな時に、こんな人に大丈夫かしら…と感じることもありますが、まずはやってみようと思えますね。

教師学の学びを活かしておられる先生方のお話をリアルタイムで伺い、質疑応答も私自身が伺いたかった事と一致していたので、とても意義深く参考になりました。

自分の実践の学び直しができ、とてもよかったです。普段の子どもとのやり取りでは課題を感じている部分が多かったのですが、その中でも子どものために教師学を使えている自分に気づくことができ、とても嬉しかったです。他の先生方の話から、自己を見つめ直すきっかけもいただきました。とても良い検討会でした。

茨城さんが他の教員の方から「教師としての姿勢を再確認できた」と言われたとおっしゃっていました。「教師としての姿勢」とはなんだろう…と考えました。それはまさに「相手を(どんなに幼くても)信頼して臨むこと」そして「自分に正直であること」なのかと今思っています。

様々な先生方の思いと実践を聞いているうちに、「子どもたちの気持ちをもっと知りたい」という思いが湧いてきました。「安心して自分を出せる場を作る」「共に支え合う」ということを心にとめて、今後も研修と実践を積み上げていきたいと考えました。

「率直に伝えること」「能動的な聞き方」によって、本人が自分の気持ちに気づき、そして相手の理解にもつながる。また、相手の気づきにもなる。そのことで、プラスの感情は共有されマイナスの感情は解決に向かい、人との関係の中で安心して自分の感情に素直に自分を生きていくことができる。そんなようなことを学ばせていただきました。ゴードンメソッドの深さや素晴らしさを改めて感じました。

自分たちの今後の課題も見えてきました。そして、やはり、大切なのは、「子どもたちが中心」であるということだと感じました。大人の価値観や決めつけや体裁などで子どもたちの本当の気持ちをないがしろにすることの無いよう、自分が教員としてどう在りたいのか、人としてどう在りたいのかを改めて考えるきっかけとなりました。どの学校も同じような悩みを抱えていて、先生方の苦労されていることも知ることができ、勇気をもらいました。

どの方の事例にもいえますが、あんなに温かく信頼し合える関係が築けるなんて驚きました。どんなに幼い子どもにだって通じる伝え方。子どもの本当の気持ちを理解してあげられるような聞き方や環境の整え方は、教師学講座を受講した人達が得た素晴らしいメソッドではありますが、さらに多くの大人達が学んで知ってもらえたら、先生や生徒だけに止まらず他の人間関係でも、温かく気持ちの良い関係を築けていけるような気がしました。改めて、教師学講座も受講してみたいと感じました。

(文責 教師学事例研究会実行委員会)