2008年教師学事例研究会のご報告

「教師学事例研究会」を開催しました。8月7日(木)は教師学基礎講座、教師学基礎講座・保育編を開講。8日(金)は亜細亜大学(東京都武蔵野市)で事例発表などを行いました。

トーク・イン!「教育とコミュニケーション力(りょく)」

今回は事例発表のほか、8つのテーマ別に分かれてフリートーキングを行いました。
九州から北海道までの各地から多くの参加者があり、教師・学生・保護者が一堂に会し、関係を作る「コミュニケーション力」をあらためて考える意見交換のつどいとなりました。

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教育現場からの事例紹介:

保育士、小学校・高校の先生方から「教師学」の実践事例と有効性について発表がありました。

安のり子

安のり子さん
保育士

《テーマ》
「子どもたちに言葉の花束を」
−心を育てる保育を実践、保育者の言葉がけひとつで保育が変わる−

保育者が「能動的な聞き方」をしていく中で、保育者と子どもたちの心がふれあっていく様や、その実践を見聞きすることで、子どもたち同士の関係へと浸透していく様子を保育現場の豊富な事例から紹介。

坂井優子

坂井優子さん
公立小学校教諭

《テーマ》
「特別支援学級で、いかに教師学を活用できるか」

発達障害があり言葉の不自由な児童には、全身に現れる言葉以外の手がかりで、能動的に聞き、そして出来たことには「肯定のわたしメッセージ」を出すことで、子どもたちが勇気づけられ前へ進んでいく事例などを紹介。

山口権治

山口権治さん
高等学校教諭

《テーマ》
「授業に活かす教師学」

生徒に「能動的な聞き方」を教え、ペアやグループで、互いに「能動的な聞き方」をしあう時間を設けた結果、クラスにいての安心感など、プラスの感情が増えたことや高校1年生を対象にしたアンケート調査での教師と生徒、そして生徒間の心理的距離についての考察を紹介。

思いっきり話そう!テーマ別フリートーキング:

今年は次の8つのテーマに分かれて、フリートーキングが行われました。

  1. 特別支援教育に活かす教師学
  2. 授業・学級経営に活かす教師学
  3. いじめや不登校の克服
  4. ゲーム機器・携帯電話と子ども同士の人間関係
  5. 教師間のコミュニケーション
  6. 保育現場のコミュニケーション
  7. 教師と親が向き合う
  8. こんなときこそ教師学

話し合いに参加した方々の感想を一部ご紹介します。

各自関心のあるテーマを選び集まったため、各々のグループでは活発な意見交換が行われ、話が盛り上がっていました。どのテーマも興味深いもので、1つに絞るのが難しく、この日ばかりは、体が2つあるといいなーと思いました(編)。

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各グループで話題になったことを全体に紹介

ポスターセッション:

「教師学」「親業」「ユース・コミュニケーション講座」の各地での実践報告

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学級通信に親業・教師学を活かす

〜学級通信は「わたしメッセージ」の練習の宝庫〜

鹿児島純心女子中学校

教師学インストラクター 園元恭子

鹿児島県の私立中学で発行している学級通信のバックナンバー等を紹介。学級内で教師学の方法が使われている様子が伝わってくる内容になっている。一例としては「研修旅行をみんなが楽しむために」をテーマに、第三法によるクラスでの話し合いなどが載っている。見た人からは「参考になった」という意見が多く寄せられた。

九州地区 教師学研究会

教師学上級講座インストラクター 土岐圭子

教育現場での問題に真摯に取り組んで13年になる「九州地区教師学研究会」の発表。「授業の成り立たない教室をどうにかしたい」というある学校での取り組み、「行政指導で地域の援助システムが機能(親子手帖の配布)」などを紹介。「継続は力なり」を実感させる内容で、見る人の心に訴えかけてくる内容となっている。

−岐阜県揖斐川中学校での取り組み−「本当の友だち」のつくり方

教師学上級講座インストラクター 松尾千景

「聞き上手、話し上手になって友だちいっぱい作ろう!」をテーマに、岐阜県の中学校で1年生から3年生まで、各学年90分で行われた授業の内容の紹介。
コミュニケーションの方法を学んだ生徒の感想など、子どもたちの生の声も掲載されていて、大変興味深い。

第三法を使えばこんな問題もすっきり素敵に解決へ

親業訓練インストラクター 溝木京子

小学校や中学校など学校で起こった生徒間、あるいは教師と生徒間での対立を、第三法の6段階を踏んで問題を解決した事例の紹介。三つのケースが紹介されており、タイトル通り、すっきり素敵に問題が解決していく様子が伝わってくる。第三法があれば、もう対立は恐くない!! と勇気付けられる内容。

小学校で教師学を実践したら

親業訓練インストラクター 近藤淳子

教師学のコミュニケーションの方法を小学生との間で実践した事例の紹介。「能動的な聞き方」「わたしメッセージ」「介入的援助」など、どれも子どもたちとの心の交流を感じさせる事例。「まとめ」に書いてある「その場、その場でわたしにできること」という言葉が読む者の心に響いてくる。

人と人との関わりについて

神奈川親業フォローの会

神奈川県伊勢原市では親業のインストラクターが教育委員会委員に任命されている。教育委員で親業訓練シニアインストラクター辻村延子さんは、今年2月、小学校で「一日校長」を務め、同校6年生の児童たちを対象に「人と人との関わりについて 〜コミュニケーションって何?〜 」をテーマに行った授業の内容、児童の感想を紹介。「一日校長」に親業インストラクターが選ばれるなんて、嬉しい!!

あたたかい学級づくり

教師学上級講座インストラクター 阿部正直

「あたたかい学級づくりのための教師の基本的なスタンス」と、「特別支援学級で」という二つのテーマから成っている。どちらも大変興味深く、読み応えがあるが、「教師の基本的なスタンス」では、阿部インストラクターからの「私の提言5あい!」が書かれていて、必見! 「5あい!」って何? 学級づくりのヒントが満載。

ユースコミュニケーション講座

学校での対立解消のためのワークショップ

親業訓練協会

神奈川県にある私立中学校・高等学校では、学校の取り組みとして中学1年時に新入生全員が「ユースコミュニケーション講座」を受講している。その様子が、「思いやる会話法を学ぶ」というタイトルで新聞に掲載されたときの記事の紹介や、生徒たちの生の声を載せている親業訓練協会発行の機関誌の記事の紹介など。

まとめ

今年のポスターションは、たいへん充実していると好評でした。また、ポスターセッションでは、その場で発表者と直接話せるというメリットもあります。熱心にポスターに見入る参加者の方々、ポスターの前で始まる議論で会場は熱気に包まれていました。来年もたくさんのポスターセッションで、多くの気づきと、新しい出会いのあることを願っています。また、来夏亜細亜大学でお会いしましょう!