2009年教師学事例研究会のご報告

「教師学事例研究会」を開催しました。8月6日(木)は教師学基礎講座、教師学基礎講座・保育編を開講。7日(金)は亜細亜大学(東京都武蔵野市)で事例発表などを行いました。

教育とコミュニケーション力(りょく)

「教育現場をいきいきさせる教師学」

午前中は「現場からの事例発表」、昼には「ポスターセッション」、午後の「グループセッション」では8つのテーマ別に分かれてフリートーキングを行いました。九州から北海道までの各地から多くの参加者があり、教師・学生・保護者が一堂に会し、人間関係作りの「コミュニケーション力」をあらためて考え、教育現場を充実させるための活発な意見交換のつどいとなりました。

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*教育現場からの事例紹介*

中学校相談室からの事例

相談室で心の叫びに、じっと耳をすませば

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− 教師学のスキルを使えば、問題の大きさより
生徒や保護者の辛く切ない感情に心が向けられ問題解決が可能−

公立中学校相談員
溝木京子さん

相談室を訪れる生徒に「能動的な聞き方」や「介入的援助」で対応することで、生徒が安心して心を開き、自分の気持ちと向き合い、相手の気持ちに気づいていく様子を、具体的な会話と豊富な事例で紹介。

児童館・保育所での事例

子育て支援に親業・教師学は必須

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− 学び合い、育ちあう仲間とともに−

岐阜県各務原市子ども館 元館長
中村秀子さん

市に初めて設置された子ども館の館長として、子育て支援の体制作りに尽力した体験、および、スタッフ全員が親業や教師学を学ぶことで、親も子もせめられない安心の場が実現され、またスタッフの対応がモデリングの場として活かされている事例などを紹介。

中学校での事例

教師学のスキルをフルに使って問題解決!

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− 教師がイライラする宿題忘れに教師学のスキルを活かす−

鹿児島純心女子中学校教諭
園元恭子さん

生徒の宿題忘れに対し、教師学の方法をいくつか試してみたが改善されなかったため、クラスの生徒全員と「勝負なし法」を使って解決し、また、忘れ物をしなくなったことについては「肯定のわたしメッセージ」を送ることで、生徒との間に深い絆が築かれた事例を紹介。

3名の発表後の質疑応答では、発表者間、さらには会場の参加者からも熱心に質問意見が交わされました。

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*ポスターセッション*

各地での「教師学」や「親業」「ユースコミュニケーション講座」の実践報告をポスターで発表。

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校内、校外に広がる教師学・親業の魅力園元恭子

中学・高等学校PTA講演会等での配布資料や「わたしメッセージ」を使った保護者の感動話などを紹介。「コミュニケーションの知恵」についての講演を聞いた中高生の感想も掲載されていて興味深い。

中学生の友人関係トラブルを介入的援助で解決溝木京子

中学1年生の女子間のトラブルに対し、介入的援助をすることで解決された事例を紹介。話し合い後の生徒の感想からも、2人の心理的な距離が縮まったのが手に取るようにわかる。

九州地区 教師学研究会土岐圭子

教育の営みが成り立たない現場の状況のもと、共に考え前進できる力をつけていきたいとの願いから発足して14年になる九州地区教師学研究会。発達障害の子を持つ親との関わり、同僚への援助、保護者が中心になっての学校を支える取り組みなどから、長年の活動が感じられる。

大学で「教師学」を学ぶ学生たち阿部正直

教職課程で教師学を学んだ大学生の授業感想メモ、および課題レポートの紹介。学生の生の声が満載で読み応えのある内容となっている。

−岐阜県岐南町公民館主催「いのちのふれあい講座」中学生対象−
「親子のすてきなコミュニケーション法を学ぶ」松尾千景

文科省より岐阜県への事業として、中学生を対象に4日間にわたり行われた「いのちのふれあい講座」についての紹介。「学校では教えてもらえないようなことを教えてもらえた」「これからの生活に活かしたい」などの声から、充実した講座だったことがうかがえる。

小学校での教師学実践事例近藤純子

行動の四角形で自分の気持ちを3つに整理し、それぞれの状況で児童にいかに対応したか、小学校での教師学実践事例の紹介。「なんでも解決の答えを教師が持っていなくてはいけないという思い込みから解放された」という気づきが印象深い。

保育園での実践事例小室光代

保育園で、日々親業のいろいろなスキルを使うことによって、子どもたちと楽しく充実した時間が過ごせるようになり、また保護者や同僚とも良い関係が築けるようになった実践事例の紹介。保護者と交わした連絡帳からも、日々の積み重ねの大切さがわかり興味深い。

お互いにある ほんとうの気持ち式場敬子

子どものおもちゃの取り合いを、保育者が子どもたちの気持ちを受け止めることで、子どもたちの気持ちが落ち着いていき、次へと考えを進めていく様子が、イラスト入りで紹介されていて分かりやすい。

どうしてこんなに騒がしいの?! ⇒ 42人の学生と教師のチャレンジ青木きよ子

授業中に騒がしい学生に対し、より有効な授業にするための話し合いをする意思があるかどうか確認した上で、クラス全員と勝負なし法の6段階を踏んで解決した事例の紹介。学生の思いがけない本音が語られていている。

ユース・コミュニケーション講座横須賀学院中学校

−学校での対立解消のためのワークショップ−親業訓練協会

神奈川県にある私立中学校がユース・コミュニケーション講座を導入して3年。今では全校生徒が受講をしている。3年間の歩みを写真とともに紹介。

まとめ

今年はポスターセッションのための時間を50分とったせいか、ポスターにじっくりと見入る方々の姿が大変多く見られた。発表者に熱心に質問をしたり感想を話したりするなど、会場は少しでも多くのことを吸収していこうという参加者の熱意に満たされていた。年を追うごとにポスターセッションの発表者が増え、内容も充実していくので、来年が楽しみである。

*グループセッション*

8つのテーマの中から各自が関心の高いテーマに集い、意見、情報交換をしました。

授業、学級経営に活かす教師学

特別支援教育に活かす教師学

いじめや不登校にどう関わるか

教えて、もっと使える教師学

教育相談に活かす教師学

教師と親が向き合う

保育現場のコミュニケーション

ゲーム機器、携帯電話と子ども同士の人間関係

話し合いに参加した方々の感想を一部ご紹介します。