2006年4月号
親の悩みアラカルト4

ほとけの子

新学期がスタートしましたね。入園、入学、進級、そして、新しい習い事など、さまざまなことのスタートの四月です。新しい環境の中で、子どものことが色々気になり心配な時期でもありますね。
私は、子どもが幼稚園に通い始めたとき、親が子どもの話を聞くことが重要だと聞いていましたので、そのことに注意していました。子どもが帰ってくると「今日どうだった?」「お友達は出来た?」「お弁当は、残さないで食べた?」など、よく尋ねたのです。ところが、子どもは「うん。大丈夫だよ」「何でー」などと言って、なかなか話してくれません。
このように、子どもとのコミュニケーションを積極的にとろうとすればするほど、子どもから反発されてしまうということがありました。どうしてでしょう。子どもとのコミュニケーションについて学ぶ「親業訓練講座」を学んで、今ではその理由が分かります。私は、子どもの話を聞くということより、自分が聞きたいことを質問していたのです。聞き出していたのですね。これでは、コミュニケーションはとりにくくなってしまいます。では、子どもとのコミュニケーションを上手にとっていくにはどうしたらいいのでしょう。
それには、子どもが話したいときに話を聞く、このタイミングが大切になってきます。では、子どもが話したいときってどういうときでしょう。まず、嬉しいときがありますね。息子が嬉しそうに
「ママ、今日ね、Kちゃんと走って僕が勝ったよ」
と話すのを聞くと、嬉しくなりますね。
「やったね。Kちゃんに勝って嬉しいね」
という会話が弾みます。
それでは、その他にどうでしょう?そうですね。辛かったり、イヤなことがあって悲しかったり、困ったりしたときですね。そんなとき子どもは、親に一番分かってほしい、聞いてほしいと願っています。
大人だったら辛い、悲しい、困ったという気持ちを言葉にして語れますが、子どもはそうはいきません。言葉でうまく表現できないので、言葉以外に表情、行動で表してきます。例えば、食欲がなくなったり、何となく親の回りをうろうろしたり、帰るなりかぶっていた帽子を床に投げつけたりと、いつもと違うなあと思うことがありませんか?それを「親業」では子どもからの(問題を持っている)サインとして見ていきます。サインは子どもそれぞれに違うので、親は、自分の子どものサインを見逃さないためにも、いつもアンテナを磨いておく必要があります。
子どもからの何らかのサインが見えたとき、親は、子どものことを正確に理解しなければなりません。そのためには、子どもの言葉をしっかり受けとめることから始めましょう(「能動的な聞き方」と言います)。
五歳の息子のMは、今朝は何か元気がありません。私が、洗面所にいると近寄って来て、「ママ、今日行きたくない」と言いました。私には、子どもからのサインだなあ、と思えたので「能動的な聞き方」で聞いてみました。
私:「M君、幼稚園に行きたくないのね」
M:「うん」
その後、Mの様子を見ていると家にやってきたばかりの(パンという名の)仔猫を抱っこしています。
私:「パンと遊んでいたいんだね」
M:「うん。パンが心配」
私:「パンと離れると心配なのね」
M:「うん。ママ見ててくれる?」
私:「見ててあげるわよ」
と言うと、いつものMになり元気よく幼稚園バスに乗って行きました。息子と気持ちが通い合った気持ちのいい朝でした。
子どもは、ありのままを受けとめてもらえると心が安定し「どうしようかなー」と自分で考えることが出来るようになるんですね。そして、子どもは悩みを口にすることで理解されたと感じ、親の愛情を感じて、やる気が生まれます。
日常のちょっとした子どもとの受け答えで、子どもの思いがけない気持ちが聞けることが嬉しく、子どもがいとおしく思えて、改めて「能動的な聞き方」の素晴らしさを感じています。
「親業」を知ることで、息子からの反発が豊かなコミュニケーションへと変化した喜びを味わっています。

落合節子 親業訓練インストラクター
茨城県在住