2007年1月号
親の悩みアラカルト

ほとけの子

子育てなんて楽しくないわ!辛いだけ・・・・・・。などと毎日起こる子どもとの戦いに母親としての自信を失いかけていた私でした。そんな頃、以前より姉に誘われていた「親業訓練一般講座」が開かれることを聞き、子育てに疲れていた私は、すがる思いで参加することにしました。
最初は半信半疑でした。何故なら子どもを生んでから子育てに関する本は何冊も読んでいたし、自分ではそれらを実行したつもりだったからです。
講座の中で「これなら、私にもやれるかも」と思う方法に出会いました。それは子どもの気持ちに耳を傾ける方法でした。「親業」では「能動的な聞き方」と言います。今までは子どもの気持ちを汲むというよりも、子どもが言ってきた言葉に対して自分の思いばかりをぶつけていました。しかしこの方法は、子どもが、自分の心の中にイヤなことがあって、それを態度や言葉で表している時に、その時の子どもの気持ちに寄り添うのです。
ある日、お風呂に入り夕食も済ませ、さあ寝かせようと、たかしを連れて寝室に行こうとすると、ぐずり、泣き出しました。
「寝なくちゃいけない時間でしょ!泣いてもダメよ!」と泣いているたかしを怒ると、余計に火のついたようになり「いやだー、寝たくない!」と叫びます。
私は、はっとし、心の中で深呼吸しながらたかしの気持ちを汲んで考えました。そして言いました。
私「たかしは寝るのがイヤなのね」
たかし「うん、イヤだよ」
私「寝るのがイヤなのにママが叱って余計にイヤだったんだね」
たかし「僕の怪獣なくなったもん」
私「怪獣がなくなったの?」
たかし「うん、ないの・・・・・・おもちゃのカゴにないの!」
私「あれ、大事にしてたもんね」
たかし「どこにあるの?ママ知らない?」
と、たかしはもう泣き止んでいます。いつものたかしなら「ママのせいだ!ママが悪いから僕の怪獣がなくなったんだ!」などと言って泣いて暴れるのですが、嘘の様に落ち着いて話してくれました。
「じゃあ、ママと一緒に探そうか?」
「うん探す〜」と機嫌が直っています。もう寝る時間も過ぎていましたが、二人で家中探し回り見付けることが出来ました。「やったー!怪獣あった!」と満面の笑顔です。子どもがそうして落ち着いて話している様子を見ると、私も素直に子どもを愛しいと感じ、一緒に探そうという気持ちになれたのです。
講座を受講するまでは、子どもが泣くと何とか泣き止まそうと、自分の思いばかりを子どもにぶつけていました。
けれど、子どもが無理を言ったり泣いたりしているのにも理由があり、イヤなことがあって子ども自身がそれを訴えているサインなんだということを講座を受けて知りました。
「能動的な聞き方」をしたことで、大事にしていたおもちゃが見付からず、気になって眠ることなんか出来なかったことが分かりました。
子どもの気持ちを聞くことで、子どもは親が自分の気持ちを分かってくれたと安心し、そして自分で解決策を考える余裕も生まれるのです。私が対応を変えたことで子どもの反応が変わる様子を目の当たりにし、聞くことの大切さをようやく理解することが出来ました。
怪獣を抱いて寝ているたかしの寝顔を見ながら、私は心に誓いました。「ごめんね、たかし。これから今までと違うママになるからね!」
今でも、毎日の様にたかしはサインを出してきます。けれど、今までと違うのは私の気持ちです。子育てって大変だけど、楽しいわって思えるから! 「親業」に出会って親として、一人の人間として自信を持つことが出来ました。
親子の対立や問題を解決していくことが出来て、しかも愛情を伝え合い、お互いに安心した気持ちで豊かな関係が築いていける。だから子育ては楽しいと感じるようになったのです。
あなたも子育てをより楽しめる対応をしてみませんか。

中本久美(なかもとひさみ) 親業訓練協会インストラクター
和歌山県在住