2011年教師学事例研究会のご報告

2011年8月8日(月)、第9回「教師学事例研究会」が金沢工業大学大学院虎ノ門キャンパス(東京都港区)で開催され、全国から80余名の参加がありました。今回は、消費電力削減への協力のため、午後からの開催となりました。(主催:親業訓練協会、教師学事例研究会実行委員会)

教育とコミュニケーション力(りょく)

教育現場の問題はこうして解決!

最初に3名の方々による教育現場からの事例発表があり、続いてポスターセッションと教師学ミニ体験コーナー、その後テーマごとにグループセッションが行われ参加者による活発な意見交換が行われました。全体として、実りある会となりました。

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*教育現場からの事例紹介*

小学校で

学級経営に活かす「教師学」

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− 小学校低学年の児童のトラブル解決を効果的に援助する−
(10年間のブランクも教師学で乗り越えられた)

公立小学校教諭(埼玉県)
齊藤 千恵さん

教職を10年間離れている間に学んだ「親業」を学級経営に活かしている実践例を紹介。児童間でのトラブルの解決に「能動的な聞き方」「わたしメッセージ」を使ったいくつかの事例が発表された。

色々な場面で

教師学でストレスをためない人間関係づくり

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− 拠り所を自分の内に築くことで、揺らぎにくいすっきりとした気分になれ、力が湧いてきた−

元公立中学校教諭(広島県)
三上 かおりさん

「三上死ね」と書かれた差出人不明の生徒からの手紙を受け取ったことで、差出人の生徒やクラス全体へ関わる中で感じた自分の気持ちや、それに対し教師学の技法が問題解決のために役立った事例を紹介。

男子校の保健室で

毎日の生徒への対応に活かされる教師学

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− 迷いながらも、何とか教師学を使おうとすることで、養護教論の私にたくさんの気づきと力が−

私立中学校・高等学校養護教諭(東京都)
真崎 昌子さん

養護教諭として、生徒の行動を「行動の四角形」に整理して、(1)生徒が問題を抱えているとき、(2)教師が問題を抱えているとき、(3)問題なし領域のときにどのように教師学を使ったかの紹介。

*ポスターセッション&教師学ミニ体験コーナー*

ポスターセッションでは各地での「教師学」や「親業」の活動の実践例をポスターで発表。多くの方が熱心に見ておられました。また展示者との間での活発な質疑応答も見られました。

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公立中学校での「教師学」TRY金本 佐紀子

学級崩壊学年と言われた生徒たちの卒業前の半年は、教師学で乗り切った学校生活であったことを思い出す。その時の事例(「生徒と」「先生と」「学年集会で」「保護者と」)を挙げて紹介。

「教師学」で生徒の未来の扉を開く
〜私の師、生徒に教わったこと〜石田 睦子

学校や訪問支援で縁のあった生徒に、教師学の対応で経験したこと、また、生徒から教えてもらったことを紹介。

「ぜんぜん集中できないよ!!」と受験生が言ったら?
〜子どもが自分で考えるために〜式場 敬子

子どもが自ら考え、行動するようになるためには、大人はどうしたらよいのだろうか? 大人が解決策を先に渡すことは、子どもの自立に繋がりにくいようです。その場合の、より効果的な対応の仕方を紹介。

今、保育園では・・・
〜社会情勢と保育現場〜小室 光代

子ども、親、保育士を取り巻く現状と保育現場、そこから生じる問題解決の方法であるゴードン・メソッドを、成功例だけでなく自分自身の悩みも入れて紹介。

小学校低学年の支援に活かす「教師学」近藤 純子

小学校1、2年の各学級の担任の先生方と連携をとりながら、学習支援員として、教師学で学んだ対応で児童をサポートしたいくつかの事例を紹介。

感情の言語化を助けるために有効な教師学
〜「能動的な聞き方」で自傷する生徒に向き合えば〜溝木 京子

自傷するそれぞれの子どもに対して、子どもの感情をいかに把握し、教師がそれに対しどのように対応したか、又教師学で何を目指しているのかについての事例と考察の紹介。

学級経営の成功のカギはわたしメッセージ
〜学級通信でわたしメッセージを発信〜園元 恭子

昨年度、ほぼ毎日発行した学級通信の中で心がけたことは自己開示と自分の考えや指導方針、クラスでの出来事をわたしメッセージで伝えること。保護者の方の理解と協力を得ることが出来て、生徒との絆も深められ、最高のクラスとなった。

九州地区教師学研修会
一泊研修(2011.3.26〜27)で出された話題とその【教師学的】展開土岐 圭子

今年の研修で出されたテーマ紹介。その中で(1)ある中学校で授業がなりたたない (2)教師間の対立について、ロールプレイをして、みんなで考察したことの事例報告。体験し、議論しあう大切さ、面白さを学んだことの報告。

子どもの問題決力が伸びる「教師学」
−介入的援助− の実践とその考察松尾 千景

幼稚園現場で日々起きる子どもどうしの“けんか”を保育士がどう介入するかで、子どもの問題を解決する力が変わります。自分から謝ったり、仲直りの方法を身につけたりします。岐阜幼稚園での実践を報告。

保育現場における関係の構築青木 きよ子

保育士を志す学生たちが教師学のコミュニケーションを学ぶことの意義は?

子どもたちにコミュニケーションの力を!
〜豊かな人間関係づくり〜親業訓練協会支援室

ユース・コミュニケーションの歩みと広がりを、ヒューマンリレーションニュースの記事を使って紹介。

今回初めての試みの教師学ミニ体験コーナーは、ポスターセッションが行われている間に希望者が参加しました。教師学の概念や用語の簡単な説明が行われ、部屋一杯になる程の盛況ぶりでした。

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*グループセッション*

6つのテーマの中から各自が感心の高いテーマに集い、意見、情報交換をしました。

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話し合いに参加した方々の感想の一部をご紹介します。

現職の先生方の事例をお聞きできて勉強になりました。(学生)

保護者、教師等、違う立場からの意見を聞くことができ、とても参考になりました。(教員)

色々な教育現場の人たちと悩みをシェアできて、とても勉強になりました。(英会話講師)

長く教師生活を過ごされている方たちは、日々の生活の中で、教師学を真剣に実践されているのだと感じました。

特別支援のサポートをされていらっしゃる方が何人も参加されていて双方の考えが聞けて有意義でした。(教師)

もう少し時間がほしいと思いました。

最後の発表の各グループの持ち時間が決まっていると、更に良かったかもしれません。

1時間があっという間でした。同じテーマでもそれぞれの先生方がもっている問題はそれぞれ違っていて、参考になる所もあり、難しいなと感じる所もありました。(小学校教諭)

直接話し合える場があるのは、やはりたくさん気づくことがあり、貴重でした。

初対面でも、率直に話が出来る雰囲気が良いと思う。

*事例研究会全般についての感想の一部をご紹介します。

事例発表のときの質問に対して発表者、インストラクターの方がさまざまな回答をされていて、よかったと思います。たくさんの質問を受けるよりも、充実していたのではないでしょうか。(会社員)

初めて参加される方や、教師学を未受講(親業は受講)などの方もおられて、新鮮な学びの場だったと思う。用語集があったのも良かった。

現場の中で先生の発する「わたしメッセージ」の大切さ、力強さを感じました。大震災以後の日本で今必要なのは、本物の思い、本物の言葉ではないでしょうか。

今回の事例紹介、ポスターセッション、グループセッション、教師学ミニ体験というプログラム内容は、1日なのに内容が濃くて良かったです。(教師)

現職の先生方の事例発表をもう少し詳しくお聞きしたかったと感じました。でも、初めての参加だったのですが、とても和やかな雰囲気の中で学ぶことができました。(学生)

教師学は先生だけの領域の問題でなく、対人関係を築く場面ではどこでも必要になるものと思います。キャリアの長い人が多く使いこなしていることに驚きました。又、先生方は話が上手でプレゼンテーション能力も素晴らしいと思いました。(家裁調査官)

やはり、多くの方の色々な体験談やお話を伺うと刺激になります。シェアリングの時間はしっかり欲しいです。(女子高教諭)

何は無くとも授業力と管理職に言われ続けています。授業力こそ、保護者、生徒、同僚からも信頼されるものだと。でも、ここへ来て「愛」=教師学だと分かりました。(教員)

「教師学を使う」という表現が気になった。実際には、メソッド(スキル)の訓練(実践)を通して、心の成長がなされている感じがした。逆に、心→スキルという学び方もあると思われる。(教員)